ABAとは? 当教室での考え方をご紹介します♬

ABA(応用行動分析)は行動と環境の関係を科学的に分析する枠組みです。しかし「ご褒美をあげているのに動かない」「ご褒美がないとやらなくなる」といった実感は少なくありません。本記事では、行動の結果だけでなく「行動を選ぶまでの状態」に着目した発達支援の考え方を、エビデンスとともに解説します。


ABAだけでは足りない?「ご褒美をあげているのに動かない」とき、行動を選ぶまでの状態をどう見るか

「ご褒美をあげているのに動かない」「ご褒美がないとやらなくなる」「やめたら激しい要求が出る」

——こうした実感は、発達支援の現場で少なくありません。

ABA(応用行動分析)は、行動と環境の関係を科学的に分析する有力な枠組みです。一方で、行動の結果だけでなく「行動を選ぶまでの状態」にも目を向けることで、支援の幅が広がります。

本記事では、報酬や賞賛の使い方に関する研究知見を踏まえつつ、当教室がABAによる行動分析に加えて確認している「状態」の視点を、エビデンスとともに整理します。

【図解:当教室の独自性】行動分析するだけでなく、行動を選択するまでの条件を確認する。

  • 当教室の独自性のイメージイラストです。
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目次

1. 「ご褒美をあげているのに動かない」背景にあること

2. ABAとは何か —— その強みと、補うべき範囲

3. 当教室が追加して確認する「行動を選ぶまでの状態」

4. なぜ「状態」を見るのか —— 科学的根拠

5. 当教室の支援の流れ

6. ご家庭でもできること

まとめ


 

1. 「ご褒美をあげているのに動かない」背景にあること

ご褒美(報酬)を使っているのに動かない、ご褒美がないとやらなくなる、やめたら激しい要求が出る——こうした実感には、複数の機序が関係しています。

外的報酬と内発的動機づけ

すでに興味をもって取り組んでいる活動に対して、外的な報酬がどのように提示されるかによっては、活動そのものへの興味や動機づけに影響することがあります。

古典的な研究では、もともと興味をもっていた活動に対して外的報酬を与えた後、報酬がなくなった条件で、その活動への自発的な取り組みが低下する現象が報告されています。これは「過剰正当化効果(overjustification effect)」として研究されてきました。

ただし、これは「ご褒美を使うこと自体が悪い」という意味ではありません。報酬の効果は、子どもの興味、課題の性質、報酬の提示方法や条件などによって異なります。したがって、報酬を使うかどうかだけではなく、その支援によって子どもがどのような行動を学んでいるのかを見ることが重要です。

▼ 【エビデンス・参考文献】過剰正当化効果(Overjustification Effect)に関する古典的実験研究(1973)    論文題名:Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the “overjustification” hypothesis.( 1973年発表) (外的報酬による子どもの内発的興味の低下:「過剰正当化」仮説の検証) 著者:Mark R. Lepper, David Greene, Richard E. Nisbett 掲載誌:Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129–137, 1973 掲載データベース・書誌情報:CiNii Research / Crossref DOI:10.1037/h0035519 論文URL:https://psycnet.apa.org/record/1974-10497-001   【補足】エビデンスの位置付け 一次実験研究(フィールド実験) 後続エビデンス:メタ分析による検証あり(Tang & Hall, 1995) なお、このテーマでは1999年にもDeci, Koestner & Ryanによる128の実験研究を対象としたメタ分析があり、外的報酬と内発的動機づけについてさらに大規模な検討が行われています。

【図解:害的動機づけと内発動機づけの機序】

  • 報酬を過剰に供給することで、脳は報酬に対する動機価値を弱めていきます。

強化を止めたときに一時的に行動が強くなること

これまで強化されていた行動に対して、その強化を急に止めると、行動の頻度や強度が一時的に増加することがあります。これは「消去バースト(extinction burst)」と呼ばれます。

ただし、消去バーストが必ず起こるわけではありません。LermanとIwata(1995)が113件の消去データを分析した研究では、消去バーストは24%のケースで確認され、代替的な手続きを併用した場合には、消去のみの場合より少ない割合でした。

そのため、「ご褒美をやめたから、必ずかんしゃくが強くなる」と考えるのではなく、これまでどのような行動が、どのような結果によって維持されていたのかを確認する必要があります。

 【エビデンス・参考文献】消去バースト(Extinction Burst)の発生頻度と治療による減弱に関する実証研究(1995)   格納テキスト:  論文題名:Prevalence of the Extinction Burst and Its Attenuation During Treatment(1995年発表) (消去バーストの発生頻度と治療中におけるその減弱)  著者:Dorothea C. Lerman, Brian A. Iwata  掲載誌:Journal of Applied Behavior Analysis, 28(1), 93–94, 1995  掲載データベース・書誌情報:PubMed / PubMed Central(PMC)/ Wiley Online Library / CiNii Research  DOI:10.1901/jaba.1995.28-93  論文URL:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/instance/1279794/pdf/jaba00003-0095.pdf   【補足】エビデンスの位置付け  実証研究(応用研究データの分析)  分析対象:113セットの消去(extinction)データ  主な結果:消去バースト(extinction burst)は113セット中24%で確認され、従来考えられていたほど一般的ではない可能性が示された。    さらに、消去を単独で実施した場合と比較して、他のオペラント手続きと組み合わせて実施した場合には、消去バーストの発生が少なかった。具体的には、代替手続きと組み合わせた場合12%、消去単独の場合36%であった。    研究上のポイント:消去(extinction)は問題行動への有効な介入となり得る一方、介入開始後に標的行動が一時的に増加する「消去バースト」が生じる可能性があり、その発生頻度と、他のオペラント手続きとの併用による減弱可能性を検討した研究。

褒め方・自己評価への影響

「すごいね」「天才だね」といった能力そのものを評価する関わりと、努力や取り組み方に焦点を当てた関わりでは、子どもの動機づけや失敗後の反応に違いが生じる可能性があります。

MuellerとDweck(1998)の研究では、知能を褒められた子どもは、努力を褒められた子どもと比較して、失敗後の課題への粘り強さや楽しさが低く、能力を固定的なものとして捉えやすい傾向が示されました。

そのため、子どもの能力そのものを評価し続けるよりも、「どのように取り組んだか」「何を工夫したか」「どこまでできたか」など、具体的な行動や過程に注目することが重要になります。

【エビデンス・参考文献】能力への称賛と努力への称賛が子どもの動機づけ・遂行に及ぼす影響に関する実験研究(1998)    論文題名:Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance.(1998年発表) (知能への称賛は子どもの動機づけと遂行を損なう可能性がある)  著者:Claudia M. Mueller, Carol S. Dweck  掲載誌:Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52, 1998  掲載データベース・書誌情報:PubMed / CiNii Research / APA PsycNet  DOI:10.1037/0022-3514.75.1.33  論文URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9686450/   【補足】エビデンスの位置付け  一次実験研究(6つの実験研究)  研究対象:主に小学5年生を対象として、知能(能力)を称賛する条件と、努力を称賛する条件などを比較。  主な結果:知能を称賛された子どもは、努力を称賛された子どもと比較して、学習目標よりも遂行目標を選択しやすく、失敗後の課題への持続性や楽しさが低く、能力不足への帰属が多く、課題遂行も低下した。  また、知能を称賛された子どもは知能を固定的な特性として捉えやすかった一方、努力を称賛された子どもは能力を改善可能なものとして捉える傾向が示された。    研究上のポイント:子どもの成功を「頭がいい」「才能がある」といった固定的な能力に帰属させて称賛することと、「よく努力した」といった努力に帰属させて称賛することでは、その後の目標選択、失敗への反応、持続性、課題遂行に異なる影響を及ぼす可能性が示された。

【図解:褒め方が与える自己評価への影響】

  • 具体的な行動や家庭に注目し、能力への称賛は、過程との因果と結びつけることが重要。

また、自己肯定感を直接高めれば、学業成績や行動などが自動的に改善するとは限りません。Baumeisterら(2003)は、それまでの研究をレビューし、高い自己肯定感がさまざまな望ましい結果の原因になるという単純な因果関係には十分な根拠がないと論じています。

【エビデンス・参考文献】自己肯定感(Self-Esteem)と望ましい結果の因果関係に関するレビュー研究(2003)    論文題名:Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles?(2003年発表) (高い自己肯定感は、より良い遂行、対人関係の成功、幸福、より健康的な生活習慣をもたらすのか?)    著者:Roy F. Baumeister, Jennifer D. Campbell, Joachim I. Krueger, Kathleen D. Vohs  掲載誌:Psychological Science in the Public Interest, 4(1), 1–44, 2003  掲載データベース・書誌情報:SAGE Journals / CiNii Research / 国立国会図書館サーチ  DOI:10.1111/1529-1006.01431  論文URL:https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/1529-1006.01431   【補足】エビデンスの位置付け  レビュー研究(文献レビュー)  研究内容:高い自己肯定感(self-esteem)が、学業成績、仕事・課題遂行、対人関係、幸福、健康的な生活習慣などの望ましい結果を「引き起こす」のかについて、それまでに蓄積された研究を広範にレビューした。    主な結果:自己肯定感と学業成績には正の関連がみられるものの、その関連だけから「自己肯定感が学業成績を向上させる」とは判断できず、むしろ良い学業成績が自己肯定感を高めている可能性や、両者に共通する第三の要因が存在する可能性が指摘された。  また、学校で自己肯定感を高めることを目的とした介入によって、学業成績が改善することを示す十分な証拠は確認されなかった。    一方、高い自己肯定感は、失敗後の課題への持続性や幸福感など、一部の望ましい結果とは関連しており、自己肯定感がすべての結果に対して無意味というわけではない。    研究上のポイント:自己肯定感と望ましい結果との間に相関が存在することと、自己肯定感を高めることによって望ましい結果が生じることは同じではない。特に学業成績や仕事の遂行などについては、因果方向が単純ではなく、「自己肯定感→望ましい結果」という単純な因果モデルを支持する十分な証拠はないと結論づけている。    さらに、著者らは自己肯定感を無条件に高めることを目的とする介入について、その効果を支持する十分な証拠はないと指摘し、自己肯定感を高めること自体を目的とするよりも、望ましい行動や自己改善と関連づけて扱うことを提案している。

【図解:報酬や賞賛のポイント解説】

  • 重要なのは子ども自身で自己調整力を発揮できることです。報酬や賞賛を使うことそのものが問題なのではありません。

重要なのは、それによって子どもが何を学習しているのか、そして、その支援がなくなったときにも自分で行動を選択できるようになっているのかという点です。

当教室では、報酬を否定するのではなく、まず「この子が行動を選べる状態にあるのか」を確認し、必要な条件を整えたうえで、別の行動を選べる経験を積み重ねることを重視しています。

目次

2. ABAとは何か —— その強みと、補うべき範囲

ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)は、行動と環境との関係を科学的に分析し、行動の変化を生み出すための枠組みです。

行動を理解するときには、行動そのものだけでなく、その前後に何が起きているのかを確認します。例えば、「どのような状況でその行動が起こりやすいのか」「行動の後にどのような結果が生じているのか」といった関係を分析することで、行動が維持されている条件を検討できます。

このような行動分析は、発達支援において重要な強みを持っています。

一方で、発達支援では、行動と環境との関係を分析するだけでなく、その行動が起きた時点で、子ども自身がどのような状態にあったのかを確認することも重要です。

  • 情動、覚醒、身体的な疲労や緊張
  • 感覚刺激の負担
  • 状況の理解
  • 「別の行動を選べるかどうか」

【図解:当教室と、ABAのみのアプローチ比較】

当教室では、これらをABAに置き換えるのではなく、ABAによる行動分析に加えて確認する領域として位置づけています。

 

3. 当教室が追加して確認する「行動を選ぶまでの状態」

同じ「動かない」という行動でも、そこに至る理由は一つとは限りません。

不安が強くて動けない場合もあれば、疲労によって行動する余裕がなくなっている場合、提示された情報を整理できていない場合、感覚刺激の負担が大きい場合、あるいは「休みたい」「手伝ってほしい」といった別の行動を選ぶ手段を持っていない場合もあります。

そこで当教室では、行動そのものだけでなく、その行動が選択されるまでの状態を次のような領域から確認します。

確認する領域見るポイント
情動不安・怒り・悔しさなどが高まっていないか
覚醒興奮しすぎていないか、逆にぼんやりしていないか
身体疲労や緊張が強くないか、身体的な余裕があるか
感覚刺激音・光・人の多さなどが負担になっていないか
状況理解何をすればよいか、情報を整理できているか
行動選択「休みたい」「手伝って」など、別の行動を選べる状態か

ここでいう「状態を整える」とは、単に子どもを「落ち着かせる」ことではありません。

音や光などの刺激量、課題の難しさ、情報の提示方法、休息の必要性、伝える手段など、その子が次の行動を選択しやすくなる条件を調整することを指します。

4. なぜ「状態」を見るのか —— 科学的根拠

情動調整は、単に問題行動を抑えるための手段ではなく、支援の対象となり得る重要な領域です。

Espenesら(2024年公表)のメタ分析では、0~23歳を対象とした35研究・3,891人を含む心理社会的介入について検討され、情動調整に対して有意な小~中程度の効果が確認されました(Cohen’s d = 0.37、95% CI [0.22, 0.51])。これは、情動調整そのものが介入によって変化し得ることを示す研究知見の一つです。

▼ 【エビデンス・参考文献】子ども・青年の感情調整に対する心理社会的介入の効果に関するメタ分析(2025)  論文題名:Effect of Psychosocial Interventions on Children and Youth Emotion Regulation: A Meta-Analysis(2025年発表) (子ども・青年の感情調整に対する心理社会的介入の効果:メタ分析)  著者:Kristin Espenes, Anita J. Tørmoen, Kristian Rognstad, Karianne H. Nilsen, Pamela M. Waaler, Tore Wentzel-Larsen, John Kjøbli  掲載誌:Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research, 52, 833–852, 2025 掲載データベース・書誌情報:SpringerLink / PubMed / PubMed Central(PMC)  DOI:10.1007/s10488-024-01365-9  論文URL:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12449357/   【補足】エビデンスの位置付け  メタ分析(Meta-Analysis)    研究内容:子ども・青年を対象とした心理社会的介入が、感情調整(emotion regulation)に及ぼす効果について、複数の介入研究を統合して検討したメタ分析。    主な結果:心理社会的介入は、子ども・青年の感情調整に対して統計的に有意な改善効果を示し、全体の効果量はCohen’s d = 0.37であった。    効果量の解釈:Cohen’s d = 0.37は、一般的な基準では小~中程度の効果に相当する。    研究上のポイント:心理社会的介入によって子ども・青年の感情調整能力に一定の改善が期待できることを、複数研究の結果を統合したエビデンスから示した研究。ただし、介入方法、対象者、研究条件などによって効果にはばらつきがあるため、「すべての心理社会的介入が同じ程度の効果を持つ」と解釈するものではない。

また、発達性協調運動障害(DCD)についての国際的な臨床実践勧告では、介入を計画する際に、個人の特性だけでなく環境との関係を考慮すること、そして活動・参加に焦点を当てたアプローチを用いることが推奨されています。

特にBlankら(2019)の国際的臨床実践勧告では、活動指向・参加指向の介入について、日常生活の活動や参加につながること、実際の環境への般化を目指すことが推奨され、エビデンスレベル1・Level Aの推奨が示されています。

これはDCDの介入に関するエビデンスであり、すべての発達支援にそのまま一般化できるものではありません。ただし、「その場でできるようにする」だけでなく、「実際の生活や参加につながるか」を見るという支援設計の重要性を示す根拠として参考になります。

▶「感覚とは?発達性協調運動障害(DCD)についてはこちらから」

 

5. 当教室の支援の流れ

状態を確認する → 必要な条件を調整する → 情報を受け取れる状態をつくる → 別の行動を選べるようにする → 実際の場面で使う

【図解:当教室の支援】

ここで目指しているのは、困った行動を単純に消すことではありません。

  • 「逃げる」しかなかった子が「少し休みたい」と言えるようになること
  • 「物を投げる」しかなかった子が「悔しい」と伝えられるようになること
  • 困ったときに、自分に必要な行動を選べる選択肢を増やしていくこと

つまり、「困った行動をなくす」ことを最終目標にするのではなく、その行動が担っていた役割を、より適応的な行動でも果たせるようにしていくことを目指します。

6. ご家庭でもできること

特別な教材を用意する必要はありません。

大切なのは、「できたらご褒美をあげる」という方法だけに頼るのではなく、毎日の生活の中に、子どもが見通しを持ち、自分で次の行動を選ぶ機会をつくることです。

例えば、次のような方法があります。

① 「次に何をする?」を毎日の習慣にする

朝起きたら、「次は何する?」と子どもに聞いてみます。

最初から「着替える」「歯を磨く」と答えられなくても構いません。「朝ごはんのあと、何するんだった?」「着替える? 歯を磨く?」と、必要に応じて選択肢を減らして提示します。

大切なのは、大人がすべて指示して動かすのではなく、子ども自身が次の行動を選ぶ場面をつくることです。

毎朝同じ流れで繰り返していくと、「朝ごはんの次は着替える」という見通しもつきやすくなります。

ルーティンは、子どもが次に何が起こるかを予測しやすくするための環境づくりとして活用できます。CDCも、日常のルーティンを一貫して行うことや、子どもの理解・能力に合わせて手順を設定することを勧めています。

② 「片付けて」ではなく、一つだけ任せる

片付けの時間になったとき、「全部片付けて!」と指示するのではなく、「この車、箱に入れてみよう」のように、まず一つだけ具体的に伝えます。

できたら、「車を箱に入れられたね」と、結果ではなく実際に行った行動を具体的に伝えます。

慣れてきたら、「次は何を片付ける?」と、子ども自身に選んでもらいます。

最終的には、「片付けの時間になったら、自分で片付けるものを選ぶ」という流れを目指します。

これは「片付けたらご褒美」という条件をつくるのではなく、日常生活の中で、見通しを持つ → 行動する → 次の行動を自分で選ぶ、という経験を積む方法です。

CDCも、片付けや指示に従う行動を増やす際には、一貫したルーティンと具体的な肯定的フィードバックを活用することを示しています。

③ 「休みたい」を選べるようにする

何かに取り組んでいる途中で、「もうやりたくない」「逃げる」「物を投げる」といった反応が出る子の場合、問題行動を止めようとするだけではなく、その代わりに使える行動を一つ教えておく方法があります。

例えば、「疲れたら『休憩』って言っていいよ」とあらかじめ伝えておきます。

最初は言葉で言えなくても、「休憩?」と大人が確認して、うなずく、カードを渡す、指差すなど、その子が使える方法で伝えられれば構いません。

そして「休憩」と伝えられたら、本当に短い休憩を入れます。

ここで重要なのは、「困った行動をしたら休ませる」のではなく、「休みたいときに別の行動で伝えられるようにする」ことです。

これによって、「逃げる」「物を投げる」以外にも、自分の状態に合わせて選べる行動が増えていきます。

④ 「手伝って」を日常生活の中で使う

靴を履く、服を着る、袋を開ける、おもちゃを片付けるなど、子どもが少し困る場面で、すぐに大人が全部やってしまわないようにします。

例えば、「できない」となったとき、「手伝ってって言ってみようか」と伝えます。

言葉で「手伝って」と言うことが難しければ、手を伸ばす・大人を呼ぶ・指差す・「てつだって」のカードを渡すなど、その子が使いやすい方法から始めます。

そして、適切な方法で助けを求められたら、実際に手伝います。

これは単純な「言葉の練習」ではありません。

困った → どうすればいいかわからない → 物を投げる、という流れを、困った → 「手伝って」と伝える → 助けてもらう、という別の行動に置き換えていく経験です。

⑤ 「できた・できない」ではなく、「どうした?」を振り返る

一日の終わりや活動が終わったときに、「できた?」とだけ聞くのではなく、「どうしたの?」「困ったとき、どうした?」「自分でできたことは何だった?」と振り返ってみます。

例えば、「靴が履けなかったけど、どうした?」「お母さんに手伝ってって言えたね」というように、問題が起きたときにどのような行動を選べたかに目を向けます。

これは、子どもに自分の行動を評価させることが目的ではありません。「困ったときには、こういう方法が使える」という経験を、大人と一緒に確認していくためのものです。

家庭で実践するときに大切なこと

最初から複数の習慣を変えようとする必要はありません。

まずは、「毎日同じ場面で、一つだけ自分で選ぶ」ところから始めてみてください。例えば、「朝ごはんの後、次に何をするか選ぶ」だけでも構いません。

うまくいかないときは、「やる気がない」と考える前に、次を一度確認してみます。

  • 疲れていないか
  • 音や人の多さが負担になっていないか
  • 指示が多すぎないか
  • 何をすればよいのか分かっているか
  • 「休みたい」「手伝ってほしい」と伝える方法を持っているか

行動を変えようとする前に、その行動を選べる条件が整っているかを見る。

家庭での習慣づくりでも、この視点が大切です。

【図解:家庭でできる、習慣化】

  • 日常生活の一部の中に散りばめられた各場面での実施例5つ

まとめ

ABAは行動と環境の関係を科学的に分析する強力な枠組みです。一方で、「ご褒美をあげているのに動かない」といった実感の背景には、外的報酬と内発的動機づけの関係、消去バースト、褒め方の影響など、複数の機序が関わり得ます。

当教室では、報酬や賞賛を否定するのではなく、まず「この子が行動を選べる状態にあるのか」を確認し、情動・覚醒・身体・感覚刺激・状況理解・行動選択といった領域から条件を整え、別の行動を選べる経験を積み重ねることを重視しています。

「なぜできないの?」から「どうすればできるの?」へ。

当教室では、エビデンスに基づく視点と日々の実践を組み合わせ、お子さまの社会参加につながる発達支援を行っています。発達や日常生活での困りごとについて、どうぞお気軽にご相談ください。

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株式会社Beelong 発達支援びーろんぐ本郷三丁目 緒方 竜太(代表取締役・管理者)   住谷 葵  (療育ディレクター・児童発達管理責任者) □保有資格  保育士、幼稚園教諭2種免許、放課後児童支援員、  強度行動障害実践研修修了、児童発達支援管理責任者   □支援実績  現場経験15年超/延べ1000名以上の児童支援(学童期・発達支援含む)   □プロフィール  保育・教育・発達支援の現場で15年以上にわたり、直接子どもたちと向き合ってきた実践経験を踏まえ、最新の脳科学や神経科学などの科学的根拠に基づく発達支援に注力。  子どもの実態にあわせた視点と、専門的な知見を融合させ、お子さま一人ひとりの「できた!」と社会参加を支える療育プログラムの考案・監修を行っています。  
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